自己高揚動機

 自己高揚動機とは、自分に関する肯定的な情報を環境から得ようとする傾向性のことです。人間には自尊心を高めようとしたり、自尊心が傷つかないように自己防衛したりする働きがある。例えば、成功の原因を自分の能力の高さに帰属する一方で、失敗したときには「運がかった」など自分以外の原因に帰属する傾向性があるのは、自己高揚動機をもっているからだと解釈できます。
 また、期待理論によって説明されてきた「失敗が重なる遂行が低下するという現象」は、以上の考え方に基づいて説明することも可能です。
 つまり、失敗によって自尊心が傷つけられることを回避するため、次も失敗しそうだと思うと、努力を放棄すること(努力の差し控え)によって、失敗が能力不足ではなく努力不足に原因帰属され、自尊心の低下を未然に防ぐことが可能になるというわけです。

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目標理論との関連

 われわれは能力と努力に関するキャパシティ概念を獲得しているため、どのような目標志向性をもっているかによって「努力」の意味合いが異なってきます。
 遂行目標をもっている場合、努力をしないで成功することは能力の高さを暗示するため、最も望ましいことになります。逆に努力をして失敗すれば、能力のなさを露呈することになるため、そのような事態は避けなければならないことになります。
 したがって、自分の能力に自信のない場合は努力の差し控えこそが得策となります。仮に失敗しても「努力しなかったから」という言い訳ができ、自尊心が傷つけられることがないからです。
 それに対して、習得目標をもっている場合、努力すればするほど学習が深まり、技能が高まると考えられているため、たとえ自分の能力に自信がない場合でも努力を惜しまないことになります。

努力が持つ危険性

 子どもたちにとって学校の学業達成場面で努力することは、ある種の危険な賭けです。努力を怠れば教師によって罰せられる一方で、努力したにもかかわらず失敗すると能力不足が露呈して恥ずかしい思いをさせられます。努力をしてもしなくても、ネガティブな結果が待っている可能性があるのです。
 M.V.ケヴィントンは、このような葛藤をはらんだ心理状態を「諸刃の剣」と名づけました。

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