コンピテンス(competence)

 コンピテンスとは、積極的に環境と関わろうとする能力や意欲のことです。コンピテンスは内発的動機づけの基盤となります。
 R.W.ホワイトは、環境と効果的に相互交渉しようとする生まれ持っての意欲と能力をコンピテンスと呼びました。
 とりわけ高等動物はコンピテンスに基づいて環境と関わりながら知識や技能を獲得し、そのことによりコンピテンスを更に高めていくという心理学的なメカニズムを備えます。
 同時に、生命体が環境に適応するを支えるような生物学的・進化論的な働きでもあるのだと主張しました。コンピテンス概念は、人が生まれながらにして「学びとる力」を備えており、環境と積極的に関わることを通して成長していく存在であることを明らかにしています。

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コンピテンスと学びの成長

 例えば、幼児の旺盛な好奇心を目の当たりにすることがあります。それはまさに環境と積極的に関わろうとする姿であり、コンピテンスが機能している典型例だといえます。
 1930~40年代に隆盛した動機づけ理論C.L.ハルの動因低減説、S.フロイトの精神分析的本能理論などには、「飢えや性といった一次的(生理的)動因に基づく内的な刺激や緊張状態によって行動が引き起こされる」という共通の前提がありました。
 しかし、ホワイトによるコンピテンス概念の提唱はいわばこれらに対する異議申し立てだったといます。すなわち、生命維持のための生理的動因とは独立した動機づけメカニズムの存在を主張するもので、その後、内発的動機づけ理論を基礎づける概念となりました。

イフェクタンス動機づけ(effectance motivation)

 イフェクタンス動機づけとは、環境と関わりながら成長を指向する生来的な欲求を満たすような動機づけのことです。この欲求が満たされた際の感情(環境との効果的な関わり合いがもたらす快い情動体験)は効力感と名づけられました。
 例えば、幼児が玩具をいじっているうちに突然音楽が鳴り出したという場合、その幼児はその次に音楽を意図的に鳴らそうとして玩具を振ってみるかもしれません。環境との相互作用に基づくこのような感覚的変化の体験が効力感を感知させるのです。
 ここでの重要なポイントは、効力感はある目的が達成された際というよりも、一連の環境との相互作用の継続的過程で生じるとされている点です。
 あくまでも環境との相互作用のプロセスで体験される情動が効力感なのです。
 なお、ホワイトは幼児や児童においてはこのイフェクタンス動機づけは未分化であり、年齢とともに認識、創造、熟達、達成といった動機に分化していくと述べました。その際に効力感の充足が興味の分化・形成に影響するのだといいます。

自己概念としてのコンピテンス

 S.ハーターは、イフェクタンス動機づけ概念を精緻化して、その発達的なメカニズムをモデル化しました。
 特に認知されたコンピテンス(特定の課題を達成するための能力に関する自己評価)に焦点が当てられ、その動機づけ的機能が強調されました。
 また、コンピテンスを領域ごとに分けた多次元的な自己評価に注目して研究が行われ、統合に関する発達的なモデルが提示されています。

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