学習性無力感

 学習性無力感とは、「どうせやっても無駄だ」という考え方が学習されてしまうことによる意欲の喪失のことを言います。
 人を励ましたりするときの常套句に「やればできる」というものがあります。目標の達成に向けて努力すれば必ず報われるはずだという考え方です。
 このように「ある行動をすれば特定の結果が生じる」という考え方を随伴性認知と呼びます。それに対して、「やってもどうせ無駄」と考えることを非随伴性認知と呼びます。
「どうせやっても無駄」よりも「やればできる」と思っていた方が、やる気が生じることは想像に難くありません。このように行動と結果の随伴性めぐる考え方は当人の動機づけを規定しているのです。

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学習された無力感

M.E.セリグマンらは、イヌを3群に分けて次のような実験を行いました。
 まず、イヌを縛りつけて電気ショックを予告なしに与えるのですが、

  • 第1のグループはパネルを鼻で押すと電気ショックを止められる「逃避可能群」
  • 第2のグループはそのパネルを押してもショックを回避できない「逃避不可能群」
  • 第3のグループは上記の訓練を受けない「統制群」

 次に柵を境に2つの部屋に分けられている実験箱にこれらのイヌを入れ、再び電気ショックを与えます。
 今度は前と異なり「信号」(ショックに先立って明かりが暗くなる)が与えられる。したがって,その信号に応じて柵を飛び越えれば電気ショックが避けられるようになっていました。
 実験の結果、逃れることのできない電気ショックをあらかじめ与えられていた「逃避不可能群」のイヌは、「逃避可能群」や「統制群」のイヌは、信号を見ても逃げようとはせずに電気ショックにじっと耐えていたといいます。
 逃避可能群のイヌには、パネルを押すという自分の行動によってショックを避けることができたという先行経験があり、自らの行動に依存し結果が生じるという予期(随伴性認知)が成立していたと解釈されました。
 一方、逃避不可能群のイヌはいくらパネルを押しても電気ショックから逃げられないいという先行経験があり、いざ避けることのできる状況になっても、柵を飛び越えてショックを回避しようとするやる気が起きなかったのです。
 これは、いくら自分が行動しても望む結果が得られないというような経験の積み重ねによって随伴性認知をもつことができず、「どうせ行動しても無駄だ」という無力感を身につけてしまうことを示唆しています。この無力感を「学習性無力感」といいます。

学習性無力感改訂理論と絶望感モデル

 学習性無力感の考え方は、人の抑うつを説明するモデルとして精緻化されてきました。
 特に、原因帰属理論を導入して、統制不可能で望ましくない出来事を個人がどのように説明するかに焦点が当てられてきました。
 その後、学習性無力感改訂理論はさらに改訂されて、絶望感モデルとして提唱されるようになります。
 絶望感とは否定的な結果から逃れることが不可能で、完全に望みのない心理状態を指します。原因帰属のスタイルだけではなく、状況に関する情報やソーシャルサポートの有無も変数として取り上げ、抑うつ症状をより具体的に説明しようと試みられています。

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