学習の目標理論

 学習の目標理論では、何を目指して行為するのかという視点からやる気の質を解明していきます。
 動機づけは古くから目標の問題として扱われてきました。
 例えば、試験に合格するという目標があるから勉強するというように、目標は特定の行為を生起させます。しかも、目標とは個人の内的な認識に基づく心理現象です。ある目標を他人がいくら強調しても、当人がその目標を自分のものとして意味づけない限り、行為は生じません。このように目標という切り口によって動機づけを解明しようとする諸理論は目標論と総称されます。目標理論には、人が多種多様な目標をもっており、自己について目標志向的で組織立った目標システムとして把握することが可能だという前提があります。

スポンサーリンク

目標内容と目標プロセス

M.E.フォードによれば、目標とは「行動を認知的、情動的、生化学的に制御することによって人々が達成しようと望む最終状態」「行為の方向性を指示する認知表象」であり,目標理論は「目標内容」と「目標プロセス」という二側面によって構成されているといいます。
 目標内容とは「なぜそれをしようとするのか」を尋ねることによって得られるような「したいこと」「達成しようとしていること」や、さらには「特定の目標を目指して行為した結果得られること」を指します。
 一方、目標プロセスとは、目標の設定や方向づけなど、目標が行為へと結びついていく動機づけ機能を指しています。

目標志向性

 1980年代半ばから、特に学業達成の研究領域で注目されてきた目標論として目標志向性に関する一連の研究が挙げられます。
 これは達成行動に従事する目的を以下の2つに大別する研究アプローチです。

習得目標(学習目標、課越志向性)

 課題の熟達、技能の習得、理解など学習そのものに焦点が当てられている目標を指します。

遂行目標(自我志向性)

 自己の能力を提示すること(自分が他者からどのように判断されるか)に焦点が当てられている目標を指します。習得目標が自己効力・自尊心、内発的動機づけ、自己制御学習方略などと正の関連があり、適応的な学習を促す傾向が見出されているのに対し、遂行目標の学習全般に対する効果について必ずしも一貫した研究的知見が得られていませんでした。そこで近年、成功接近-失敗回避の次元を用いて遂行目標をさらに二分することによって研究知見を整理する試みがなされています。
 特に遂行回避目標(他者に無能さをさらすことを避けるという目標)が学習成果などに対して負の関連があることが明らかになっています。

学級の雰囲気としての目標志向性

 理解や熟達など、個人の進歩を大切にする授業もあれば、相対評価や競争を強調する学校もあるでしょう。習得目標と遂行目標の区別をこのように学級や学校など教育環境の風土として位置づけることも可能です。
 学級の雰囲気と目標志向性では、とりわけ「誤りや失敗」「努力」の意味づけが両者で異なってきます。
 誤りや失敗を肯定的にとらえて努力を恐れないような学習者を育てるような習得目標の学級風土をつくり出すことが、教育実践での課題なります。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする